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米シスコ、対日戦略を急転換

日経コミュニケーション 2005.1.1
米シスコ、対日戦略を急転換 P.59~P.63


「富士通と米Cisco、ルータ・スイッチ分野で提携」、12月6日こんなニュースが報じられました。まだ記憶に新しい方も多いかと思いますが、仕事上、また個人的にも気になるニュースだったので、最新号の記事をザッと眺めたとき真っ先に目に付きました。

今回の記事は緊急速報という形で第1章にシスコの今後3~5年の戦略を、第2章でシスコが富士通と手を組んだ狙いを中心に掲載しています。

日本はブロードバンドとモバイルの分野で世界の中でも有数の先進国で、シスコにとっては米国に次ぐ第二の大きな市場のため今後、日本の通信キャリア向け製品に特に力を入れていくといいます。ちょうど今年行われたインターロップの講演でもマイク・ボルピ上級副社長が通信キャリア向けの新しいハイエンドルータ「CRS-1」の紹介とともにそのことを強調していたのを思い出しました。
ご存知のように今までのシスコのビジネス手法というのはCisco800シリーズなど一部の製品を除いて日本向けのカスタマイズはほとんどせずに代理店を通じて米国の製品をそのまま販売してきました。開発部門が日本国内にないため「サポートの手厚さ」「レスポンスの速さ」といった面はやはり国内メーカに比べて劣る部分でした。

NTTなど日本の通信キャリアは今まで自社で交換機など装置の仕様を決めメーカに製造を委託するといったオーダメイドの通信機器を使っていましたが、IPネットワークではルータなど安価な汎用機器が使えるようになった反面、装置内部がブラックボックス化しているため何か装置にトラブルが起こった場合はメーカの解析を待つ必要があるため、そういったトラブルが発生した場合にいかに迅速なレスポンスが期待できるかということが、機器選定時の大きなポイントになっています。

そのためシスコは方向を転換し、日本の通信キャリアと関わりの深い富士通と提携し、「CRS-1」用の基本ソフトである「IOS-XR」の共同開発をすることとなりました。今年の5月に「IOS-XR」の発表がありましたが実はまだ基本機能しか実装されていないようで、通信キャリアのサービス提供に関わる機能モジュールについては富士通と共同で開発するとのことです。これにより富士通の技術者がIOS-XRのソースコードまで見ることができるようになるため、日本の通信キャリアの要望に答えることができるようになります。

また、富士通にとってもメリットがあるようで富士通はネットワーク機器としてLRシリーズやGeoStreamシリーズなどの製品を提供していますが、これらのルータ売り上げが年間400億円に対し開発費に100億円かかっているため黒字化が最大の課題でしたが、今回の「IOS-XR」共同開発を通してルータ向けソフトの開発費用を削減する計画とのことです。GeoStream R9x0シリーズを触ったことがある方はお分かりかと思いますが、このルータのコマンド体系はかなりCiscoライクな作りになっています。

プロトコル動作についてもGeoStreamに実装する際はCiscoルータのプロトコル動作を調査し、参考にして作りこみを行っていたという話を聞いたことがあるので、今回のIOS-XRの共同開発もそう難しい話ではないなと思いました。

両者の思惑が一致して実現した今回の提携ですが、ユーザである通信キャリアにとっても高い信頼性についての要望やサポートへの迅速なレスポンスが期待できるため歓迎すべきことだと思います。

共同開発したIOS-XRを実装した製品が2005年春に「Fujitsu-Cisco」ブランドとして出荷予定とのことですが、記事でも述べられているように通信キャリア向けルータで競合するジュニパー製品に搭載されている基本ソフト「JUNOS」と比べて、まだまだ実績のない「IOS-XR」がどれだけ安定稼動できるかが国内の通信キャリア向け市場において成功を左右する「鍵」だと思います。

今回の記事は特に技術的な話ではありませんでしたが、NECと日立が10月に「アラクサラネットワークス」を設立するなど、国内の通信機器メーカの勢力図を決める業界の大きな動きのひとつとして大変興味深い記事でした。

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